今朝、タラの芽の様子を見に行ったら、防獣ネットがぐしゃっと内側に倒れていた。
嫌な予感しかしない。
中をのぞくと、ここ数か月かけて伸びた葉はきれいに消え、残っていたのは棒になった苗だった。
鹿である。
3月に買った、トゲなしタラの芽
3月に、トゲなしタラの芽の苗を購入した。
植えてから少しずつ葉が増えて、6月末にはこんな感じになっていた。


派手な成長ではないけれど、買って、植えて、囲って、様子を見てきたぶん、こちらとしては立派な成果である。
「タラの芽」は、タラノキの新芽
そもそも「タラの芽」という名前の植物があるわけではない。
春に食べるタラの芽は、ウコギ科の落葉樹、タラノキ(Aralia elata)の若芽である。北海道森林管理局の樹木図鑑を見ると、枝や幹、葉の付け根にはトゲがあり、その若芽を食用にすると説明されている。
つまり、食べようとしていたのは「芽」だけれど、育てていたのは木だった。小さな苗を見ていたので、わいの中ではまだ山菜の鉢植えくらいの感覚だった。
しかもタラノキは、森林総合研究所が代表的な「先駆樹種」に挙げる木で、森が開けて明るくなった場所にいち早く出てくるタイプらしい。山菜の苗をおとなしく育てているつもりだったけれど、植物としてはわりと攻める側の木だった。
トゲありと、トゲなし
野生のタラノキには鋭いトゲがあるのが普通。ただし、同じタラノキでもトゲの少ないものがあり、東北森林管理局は「刺が少なく短いものをメダラと呼ぶ」としている。
また、栽培用にはトゲの少ない系統や、ほとんどトゲのない改良品種も選ばれている。鹿児島県森林技術総合センターの資料にも、野生種は鋭いトゲがあるため、栽培にはトゲのない改良品種が好まれるとある。トゲが少なければ、苗の管理や収穫がしやすい。
今回わいが買った苗も、トゲなしとして売られていたものだ。
記事に出てきた苗
トゲなしタラノキの苗
購入したのは「トゲなし」として売られていた苗。販売ページでは、苗の大きさと発送時期も見ておいたほうがよさそうです。
※在庫・価格・苗の大きさや仕様は、各販売ページで確認してください。
人間には扱いやすい。
ただし、防獣性能まで付いているわけではなかった。
どんな味で、どう食べるのか
タラの芽の持ち味は、ほのかな苦味と独特の香り。農林水産省の紹介でも、春の訪れを感じさせる食材で、「山菜の王様」とも呼ばれるとある。
定番の食べ方は、やはり天ぷらだろう。付け根を包んでいる硬い部分は「ハカマ」と呼ばれ、これを外して水洗いしてから衣をつけて揚げる。山形県のタラの芽レシピにも、この下処理が紹介されている。
天ぷらにすると衣の香ばしさの中に山菜らしい苦味が残る。塩でシンプルに食べたいところだ。ほかにも、さっとゆでておひたしや酢味噌和え、ごま和えにする食べ方がある。
なお、「山菜なら採れたてを生で」と思うかもしれないけれど、タラの芽は生食向きではない。毒草だからという話ではなく、生のままだとアクによるえぐみや苦味が前に出やすいからだ。天ぷらは下ゆでせずに衣をつけるけれど、油で加熱している。おひたしや和え物にするなら、さっとゆでて水に取り、アクを抜いてから使う。農林水産省のタラの芽を使ったレシピでも、最初にさっとゆがいている。
ちなみに、今回鹿に食べられたのは、料理にする春の新芽そのものではなく、苗が成長して広げていた葉である。この木を育てて、次の春に出る芽を収穫する。その途中だった。
ほろ苦さを味わう前に、結果だけが苦くなった。
鹿対策は、したつもりだった
鹿が庭の植物を食べることは知っていたので、最初から防獣ネットで囲っていた。
上から首を伸ばして食べられないように、高さは1.8メートルを確保。
下から潜り込まれないように、ネットの下部も支柱に結んで固定した。
上もだめ。下もだめ。
これならさすがに入れんやろ、と思っていた。
いま振り返ると、わいは鹿の「首の長さ」と「潜り込み」ばかりを警戒していたらしい。
筋力については、ほぼ考えていなかった。
屈強な草食動物、正面突破
そして今朝の姿がこれである。

ネットに小さな穴を開けた、という感じではない。
一面をまとめて押し倒している。
「草食動物」と聞くと少し穏やかな感じがするけれど、相手は山の中を歩き回る屈強な獣だった。
わいが支柱にネットを結んだ程度の防御は、鹿の筋力の前ではあえなく決壊。
上から首を伸ばすかもしれない。下から潜るかもしれない。そこまでは考えた。
正面から力ずくで押し倒すとは聞いてない。
いや、聞いてなくても考えろという話ではある。

食べ方も容赦がない。
葉だけ、きれいになくなっている。
ここ数か月の成果が水の泡である(´;ω;`)
そもそもニホンジカは、かなり食べるし、かなり増える
「草食動物」という言葉に、わいが勝手に穏やかなイメージを乗せていただけだった。
環境省のニホンジカ管理に関する基礎資料によると、成獣の体重はオスで40~130キロ、メスで25~80キロ。地域差はあるものの、ネットを力ずくで押すには十分すぎる体格である。
食性もかなり幅広く、毒性のあるものを除けば、ほとんどの植物を食べる。木の葉や草だけでなく、餌が乏しければ樹皮や落ち葉まで食べるという。
しかも成獣メスの妊娠率は80~90%以上と高く、自然増加率は年20~30%。条件がよければ2歳から毎年1頭を産める。
食べる範囲が広いうえに、増える力もある。
タラの芽を食べた一頭だけの話で終わらない理由が、だんだん見えてきた。
長野県では、庭の話では済まない
長野県の第6期ニホンジカ管理計画では、2024年度末の県内の推定個体数を14万9,144~33万7,084頭、中央値で22万1,230頭としている。
もちろん山の鹿を一頭ずつ数えた数字ではなく、捕獲数や各種調査から幅を持たせて推定したもの。それでも、ずいぶんな数である。
さらに県の野生鳥獣による農林業被害額の最新集計では、2024年度のニホンジカによる被害は約3億円。全鳥獣による農林業被害約8億5,000万円のうち、ざっくり36%を占め、前年度より19.5%増えている。
被害は畑の野菜や果樹を食べられるだけではない。林業では苗木や樹皮が食べられ、森林の下草が減れば、そこを餌やすみかにする昆虫、小動物、鳥にも影響が広がる。さらに土壌の浸食や表土の流出まで懸念されている。
うちのタラの芽は小さな一件だけれど、同じことが畑や森林のあちこちで積み重なると、もはや「鹿に葉っぱを食べられた」で済む規模ではないらしい。
結界をどう立て直すか
長野県のニホンジカ対策資料を後から読むと、ネット柵は高さ2メートル以上が目安になっていた。シカは2メートルほどジャンプできるらしい。
わいの結界、1.8メートル。
少し足りていない。
さらに、ネットの下端は外側へ折り返してアンカーで固定。網目は5センチ以下で、破られにくいステンレス線入りが望ましい、とある。
資料にはネット柵の弱点として「かみ破られて突破される可能性がある」とまで書いてあった。
先に読め、わい。
同じようにネットを張り直しただけでは、たぶんまたやられる。
次は高さだけでなく、地際の固定、ネットの素材、支柱そのものが動かないための補強まで考える必要がありそうだ。
調べてみると、タラノキは根から芽を出す「根萌芽」が確認され、栽培でも根を使う挿し根法で増やされている。
だからといって、この棒になった苗が必ず復活するとは言えない。ただ、今の時点で完全に諦めるのもまだ早そうだ。まずは目の前で崩れている結界をどうするか。
鹿にとっては、数か月かけて人間が育てたものも一食分だったらしい。
そういわれても・・・(´;ω;`)


コメント